研究の射程
KIBIDOMは、古代吉備に関する文献史料・考古学的知見・伝承・地誌を 横断的に収集し、再解釈することを目的としています。 単一の学問領域に閉じず、歴史学・考古学・民俗学・地理学を架橋しながら、 この地に堆積した記憶の層を一枚ずつ剥がしていく試みです。
対象とする時代は、弥生時代後期から古墳時代、 さらに律令期における吉備三国分立までを中心とし、 必要に応じて中世以降の伝承・祭祀の変容にも視野を広げます。
考古学的アプローチ
造山古墳・作山古墳に代表される巨大古墳群は、 吉備が大和に匹敵する政治勢力を有していたことを物語る最大の物証です。 墳形・規模・副葬品の構成を比較検討することで、 被葬者の階層性や、対外交渉の実態を読み取ることができます。
また、鬼ノ城に代表される古代山城、製鉄・製塩遺跡、 須恵器窯跡群の分布は、吉備の生産基盤と 交易ネットワークを復元する上で欠かせない手がかりとなります。
文献史料の検討
『古事記』『日本書紀』に記された吉備関連記事、 『播磨国風土記』『備中国風土記』逸文、『延喜式』神名帳など、 断片的に残された史料を丹念に読み解きます。
正史の記述は中央政権の視点に立つものが多く、 その行間や沈黙を読むことで、編纂者が描こうとしなかった 在地の論理を浮かび上がらせることが重要です。 中世の社伝・縁起、近世の地誌類もまた、 古代の記憶がどのように受け継がれ変容したかを示す貴重な資料となります。
伝承と現地調査
温羅伝説をはじめとする吉備の伝承は、 神社の祭祀、地名、民俗芸能のなかに今もかたちを変えて息づいています。 文献に現れない地域の記憶を拾い集めるには、 現地に足を運び、土地そのものに問いかける作業が欠かせません。
祭礼の所作、奉納される神饌、社殿の向きや配置、 山と川と集落の関係。 それらは古代の景観と信仰の構造を、 今日の私たちに静かに伝え続けています。
今後の展望
KIBIDOMは継続的なフィールドワークと史料調査を通じて、 収集した知見をデジタルアーカイブとして体系的に整理し、 広く公開していくことを目指します。
古代吉備という主題は、地域史であると同時に、 日本という国家の成立過程を問い直す視座を内包しています。 その射程を見失わぬよう、地道な記録と検証を積み重ねていきます。